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リノたちはオーブの事を調べるため、ここ数日ダーマに滞在していた。 だが、調べ物ばかりでは息が詰まるというナギサの提案により、バハラタを訪れていたのである。 彼女というよりは、本を読むのが苦手なヤヨイのため、といった方が正しいのだが、気づいているのは提案した本人だけだった。 「師匠! ししょー!」 日向ぼっこするにも、洗濯をするにも、そして旅をするにもちょうど良い、そんな青空広がる緩やかな昼下がり。 バハラタの宿屋に元気な声が響き渡り、勢い良くドアが開かれる。 「どうした、ヤヨイ?」 冷静に返事をするトラッド。それが誰なのかは振り向かなくても分かっているからである。 「ブーメランの使い方を教えて下さい!」 「……また急だな」 彼はヤヨイの突拍子も無い言葉によく苦笑いを浮かべているが、決して嫌なわけではない。 むしろある種の心地良さすら感じている。何だかんだで、この無邪気な弟子が可愛くて仕方ないのだろう。 「ほら、さっき凄かったじゃないですか?」 「さっき? ……ああ、あの時か」 少し考えた後、トラッドは納得した声を上げた。 ここへ来る途中、ハンターフライの群れをブーメランでまとめて倒したのだが、あの時のヤヨイの目がいつになく輝いていたのを思い出す。 「私も出来るかな、って」 「……すぐに出来るもんじゃないぞ」 意地悪なようで、何処までも甘い言葉を返すトラッド。 その時、挑発するような声が開いた扉の向こうから聞こえてきた。 「すぐに出来たら、トラッドの立場がないわよね」 誰が言ったのかは嫌でも分かり、彼は大きくため息を吐いた。 先ほどのヤヨイとは、まるで正反対の態度である。 「ナギサ、どうしたんだ?」 同じ部屋にいたリノが、何となくといった感じで尋ねると、彼女は満面の笑みでこう断言した。 「リノちゃんの顔を見に来たの」 「……何故」 「可愛いからに決まってるじゃない」 「だから……!」 いつものように頬を赤くしながら否定するリノ。 これまであまり言われた事がないから、それとも元々の性格によるものか。 何度も耳にしている言葉にも関わらず、彼女はいつもこうである。 そこも可愛いと思っているからこそ、ナギサはいつも思いついたように口にするのだが。 「ねー! 教えて下さいってば!」 「まぁ、そこまで言うなら……」 その隣では、相変わらず師弟の奇妙な会話が続いていた。 「師匠……かぁ」 それを見ていたナギサが、珍しく感慨深い表情で呟いた。 リノはそんな彼女を不思議そうな様子で見つめている。 「ちょっと昔の事を思い出して、ね」 「昔って?」 「私がまだ僧侶だった時の事。一応、師匠がいたのよ」 「……そうなんだ」 驚いた表情を浮かべるリノ。今のナギサからは想像がつかないからだ。 「よかったら、話してあげよっか?」 「…………うん」 2人の慌しいやり取りが一向に止まる気配を見せない中、リノはこくりと頷いた。 今から遡る事、9年前――――つまり、ナギサが13歳の頃の事だ。 「満室?」 「はい、申し訳ございません」 黒コショウの名産地で知られるバハラタの宿屋。 カウンターでは恰幅の良い男主人と、首から両肩にかけて白に覆われた、藍の法衣に身を包む大人びた少女が話をしている。 胸元には銀のロザリオが鈍い輝きを放っていたが、あまり気にかけている様子は無い。 その少女とは――ダーマで僧侶になったばかりのナギサであった。 早速、修行の旅に出た彼女は、まずこの町に立ち寄ったらしい。 理由は至って単純で、ただ一番近かったからだ。 もう一つ付け加えると、通い慣れているという理由もある。 「……まぁ、いいわ」 夜も更け、宿に泊まろうと考えた彼女だが、生憎部屋は空いてないらしい。 だが、特に困った様子も見せず、ナギサは早々と宿屋を後にした。 「今の少女は?」 誰もいなくなったカウンターで、宿の主人は突然話しかけられてびくりとする。 丁寧な口調だったが、低音が響くその声には不思議と威圧感があった。 「あ、いえ……部屋が満室だったので、お断りした所なんですよ」 「……そうか」 振り向いた先にいたのはスキンヘッドの大きな男。 修行中の僧侶らしいのだが、ボロボロの青い僧服の隙間からは蛇のタトゥーが覗いており、とてもそうは見えない。 来た時は何をされるのだろうと、と恐怖に震えていたが、今の所何も被害は出ていない。 それどころかすっかり他の旅人と打ち解けている様にも見える。 「教えて頂いて感謝する」 「いえ、そんな……お出かけですか?」 男は無言で頷くと、すぐに宿屋を出て行った。愛想の欠片も無い表情で。 「…………」 主人は何の根拠もなく、血の雨が降るような予感を覚え、背筋を震え上がらせるのであった。 (ま、野宿が初めてってわけでもないし) 一方、ナギサは町の中を少し眠そうな顔で徘徊していた。さほど機嫌を損ねているようには見えない。 バハラタは主にダーマへ修行で訪れる者、または帰る者が立ち寄る町だ。 更に黒コショウを求める人間も多い為、結構な賑わいを見せている。 そのせいか、町の人々はすっかり旅人に慣れているようだった。だからこそ、治安も悪くない。 (身の程知らずがいても、呪文でどうにか出来るし……) やがて見つけた手頃な場所。大木の下に座り込みながら、ナギサは指先に呪文の火を灯す。 それでランプに火をつけ、黙々と野宿の準備を始めた。 刹那、不意に強烈な気配を感じ取り、彼女は杖を片手に振り向く。 「誰?」 全てを飲み込んでしまいそうな闇に向け、険しい声で問いかけるナギサ。 額にはうっすら冷たい汗が浮かんでいたが、彼女は拭おうともしなかった。 「気付かれるとは……私の腕も落ちたものだな」 「質問に答えなさいよ」 身体が凍りつきそうな殺気。ナギサは祖父から貰った魔道士の杖をより強く握り締める。 心身ともに、いつでも戦う準備は整っている、とでも言うように。 「失礼した。私の名前はケイチと言う」 しかし、自らの名を淡々と告げる男には、動揺も戦意さえも見受けられなかった。 皮肉にも、それが彼女の冷たく突き刺すような気配――殺気にも似た何かを増大させる。 「……それで、何の用?」 こういう時は普通自分も名乗るものだが、今の彼女にはとてもそんな余裕は無い。 「歳は?」 「13……って、質問に答えなさいよ」 金色の髪を指先で玩びながら、責める様な口調でナギサが言うと、また謝りながら男はようやく姿を見せた。 スキンヘッドと少しだけ血走った黒い目。 一般的な青の僧服を着ているが、どちらかというと山賊のような雰囲気だった。 手の甲に見える蛇のタトゥーの瞳が、ランプの灯りで光っているように映る。 「怪しい事、この上ないわね……」 この状況の中、ナギサは思った事を素直に述べた。 しかし、ケイチは無自覚に凶悪な笑みを浮かべるだけで、多分怒ってはいない。 「生まれつきだ」 「タトゥーが生まれた時からあるわけないでしょ?」 「これは趣味だ」 本当に僧侶かと疑わしく思い、ナギサはため息をついて話を戻した。 「………で」 「何だ?」 「それはこっちのセリフよ。一体、何しに来たの?」 ほぼ一足分にまで詰められた間合い。だが、相手は武器どころか身構えてもいない。 それなら自分の方が早い、そう考えた彼女はケイチの一挙一動を、睨みつけるように観察していた。 「…………」 「答えられない?」 返事がない事に、苛立ちを隠せない彼女。しかし、彼は眉間に皺を寄せたまま、じっと考え込んでいる。 「どう言おうか迷っているだけだ」 「自分の言い易い言葉で結構よ」 それから深呼吸を一度だけすると、こう告げた。 「女の子が1人で野宿は感心できない」 「……へ?」 予想外の言葉に、間抜けな声がナギサの唇から零れ落ちる。 「だから、私が野宿する。その代わりに宿屋に泊まったらどうだ、と勧めにきたのだが……」 「……何の冗談よ」 「私が冗談を言うように見えるか?」 「見える。しかも罠」 「…………そうか」 強面の顔が少しだけ傷ついたように見え、何故かナギサの胸には罪悪感が芽生える。 張り詰めているようで、何処か緩い空気の中――――突然、お腹の鳴る音が響いた。 「何も食べて無いのか?」 「……こ、これから食べる所だったのよ!」 恥ずかしそうな様子だが、一歩も引かずにナギサが問い返す。 「それは悪い事をした。やはり、何も食べないというのは身体に良くないからな……ほら」 ケイチは相変わらず無愛想にそれだけ言うと、腰につけた袋から何かを取り出した。 「パンだ。焼き立てではないが」 「な、何よ……餌付けってわけ?」 「……そんなに怪しいか、私は?」 悲壮感漂う声。例え人相が良くなくても、人には心がある、と改めて感じてしまう音色だった。 と同時にナギサは、もしかするとそれほど悪い人間ではないのかもしれない、と思った。 「…………うん」 しかし、前向きに善処はするものの、ナギサは間を置いてからやはり首を縦に振る。 初対面な上に夜盗のような風貌というのは勿論あった。 だが、何よりの原因は誰も信じれない彼女の頑なな心にある。 ケイチはそれっきり何も言わなくなったが、その場を離れようとはしなかった。 翌朝。鳥のさえずりと、吹く風に姿を変える木漏れ日の中、ナギサは目を覚ます。 (あれ……いつの間に寝ちゃったんだろ……) 自分の身体を覆う毛布に疑問を感じながら、昨夜の事を思い出そうとした。 だが、何か精神的に衝撃を受けた記憶だけが頭に残っており、それ以外は何も思い出せない。 「えっと、確か……」 とりあえず彼女は下がりそうになる瞼を擦り、少し乱れた髪を手櫛で適当に整え始めた。 「起きたのか」 「………あ」 だが、ナギサの無意識の行為は、突如かけられた低音によって、ぴたりと動きを止める。 「何だ、まだ寝惚けてるのか。水でも飲め」 「……誰?」 目の前にいたのはスキンヘッドの大きな男。 ボロボロになった群青色の僧服からは、まるで丸太のような腕と足が2本ずつ伸びている。 その割に差し出された竹の水筒は、妙に小さかった。 「私は昨夜名乗ったぞ? 次はそちらの番ではないのか?」 「そう言われても……って、あ!」 「思い出したのか?」 ナギサの言葉に、彼は少しだけ嬉しそうに反応した。とはいっても、凶悪には違いないのだが。 「確か、私の身ぐるみを剥がしにきた山賊だっけ?」 ……………………………… 長い沈黙を経て、太陽の光を浴びて輝く頭に血管が浮かび上がる。 (……分かり易い人……) ナギサは胸中で呆れた声を呟くが、すぐに怒りを鎮めようと若干軽い口調で呟いた。 「冗談よ。確か、ケイチって言ったっけ?」 「覚えているなら良い。で、お主の名は?」 「……何で言わなきゃいけないのよ」 「それが礼儀というものだ」 張り詰めた空気。ナギサの碧眼は会話をしている間でも、一向に警戒の色を薄めていなかった。 だが、もし彼が悪意を持って近づいたのならば、 (今、無事なのも変な話よね……) こうして言葉を交わす事も出来なかったはずである。 「山賊みたいな男に礼儀を諭されるようじゃ、世も末ね」 それでも、やはり答えようとしない彼女に、ケイチは精一杯の笑顔を浮かべながら告げた。 「……まぁいい。その態度が私にだけならな」 その一言にナギサはハッとなり身を固くするが、彼は特に気にも止めず、袋から何かを取り出した。 「何よ、これ……?」 「パンだ。昨夜と違って焼きたてだぞ」 漂ってくる香ばしい匂いに彼女は空腹感を思い出すが、開いた口からは違う言葉が紡がれる。 「……要らないわよ」 「何故だ?」 思い返してみると彼女は昨夜、ケイチの前で食事を取っていない。 更にお腹の鳴る音がした事も考えると、ずっと何も食べていなかったというのは容易に想像出来る。 「……金など取らないが?」 彼は咄嗟に頭に浮かんだ事を尋ねたが、ナギサは宿屋に泊まろうとしていたのだから、その可能性は極めて低い。 「…………違う」 ケイチの予想通り、彼女は震えた声で答えながら、弱々しく首を横へ振る。 「無論、毒など含まれてないぞ?」 続けて彼はパンを小さく千切り、目の前で食べて見せながら問いかけた。 顔に似合わない上品な食べ方に、ナギサはわずかに眉を動かすものの、再び否定の意を示す。 しかし、ケイチは唐突に理解した――――この誰にも頼ろうとしない姿勢こそが、彼女の歩んできた道なのだと。 力を追い求めるあまり、 笑みに歪んだ形が想像出来ないくらい、きつく結ばれた桜色の唇。 そこには他者を拒絶する空気しか存在していなかった。 だからこそ、彼は穏やかに笑って見せる。表情を一切隠す事無く。 「……何がおかしいのよ」 いつの間にか顔を上げていたナギサは、静かな怒りを露わに頬を膨らませて呟いた。 それがより一層面白かったのか、ケイチは豪快な笑い声を上げた後、彼女にこう尋ねる。 「お主、僧侶になってまだ間もないのか?」 「……そうよ。悪い?」 例え初対面であっても、見る者が見れば相手の力量などすぐに見抜けるものだ。 以前、全ての呪文を使いこなす魔法使いだったナギサにも、その感覚は理解出来る。 だが、頭では分かっていても気持ちはそうではない。要は、あまり面白くないという事だ。 そんな彼女の心境を見透かしたかのように、元々細い目を更に細くしたケイチは言う。 「なら、話は早い」 「それは、どういう意味かしら?」 「弟子になれ」 「…………は?」 普通、立場が逆じゃないのか。そんな疑問を覚える余裕すらないほど、衝撃的な言葉だった。 「私なら、全てとはいかないまでも呪文を教える事が出来る。悪い話ではあるまい」 「別に教えてもらわなくたって――」 「それにもう一つ。一応、人生の先輩として教えたい事もある」 ナギサは彼の前で初めて動揺しながらも、これまでと同じように否定しようとする。 だが、遮るように紡がれた言葉に、彼女は思わず呆然となってしまった。 「な……何を教えるつもり?」 本当に自分の声なのか、と疑いたくなる上擦った声。 「それは人として今以上に強くなるために、必ず必要になる事だ」 「だから、何なのよ!?」 掠れながらも凛としている少女の声。ケイチは意地の悪い笑みを浮かべながら呟く。 「弟子になって、私が良しとすれば教えてやろう」 「……何よ、それ」 まるで話にならない。そう言いたげな表情で、ナギサはその場を立ち去ろうとした。 「お主にとって、力とはその程度のものだったのか?」 「他にやりようなんて、いくらでもあるわ。だから、わざわざ山賊まがいの男に従う必要なんてないの」 彼の言う事が気にならないわけではない。だが、自分の生き方を曲げてまで教わる事のようにも思えない。 ナギサは少し足早に、今度こそ立ち去ろうとした。 「……っ!?」 しかし、不意に強烈な気配を察し、身構えながら振り返ってしまう。 「ならば、試してみるといい」 目の前には、先ほどから全く姿勢を変えていないケイチの姿。 ただ、明らかに違うのは――タトゥーと同じ蛇のような光を放つ2つの黒い瞳だけだった。 (……強い) 知らず知らずの内に握り締めていた魔道士の杖。掌にはじんわりと汗が滲んでいる。 ナギサは碧眼を鋭くし、まずは相手の攻撃を見極めようと待ち始めた。 ……………… (どういう、こと?) 睨み合って数分。ケイチは一向に何も仕掛けてこない。 (それに……) 更に言うと、彼は隙だらけだった。冷たい汗が浮かぶほどの殺気を放っている、にも関わらずだ。 ちなみに、ナギサはこれまで武道に携わった事がない。 負ける気がしないのは、あくまで呪文戦に限った話だ。 確かに町の人間よりも身のこなしには自信はあるが、それでも多少マシといったレベルである。 そんな彼女から見ても、隙だらけというのはどう考えても怪しい。 「どうした?」 ケイチは未だに笑みを崩さぬまま、無防備に立ち尽くしている。 その姿はまるで、早く挑んで来いと言っているようでもあった。 ……………… 時間だけが自分のペースを保ったまま、緩やかに流れ去っていく。 だが、2人の立っている位置も身構えた形さえもそのままである。 変わったのは太陽の高さと――――幾度と無くナギサの頬を伝って落ちる、汗の量だけだった。 「……こ……のっ!」 彼女は現状を打破しようと――もしくは堪え切れなくなったのか――杖を両手で握り締めて飛びかかる。 (受け止められたら……呪文でどうにかすれば……!) 同時に自分の内でベギラマの構成を練っていた。 昔ほどの威力は無くても、目の前の相手を打ち倒すには十分だと考えながら。 一方、ケイチは頭上から襲い掛かろうとする杖を前に、一歩たりとも動こうとしなかった。 視線さえも向けておらず、未だ黒い瞳でナギサの姿を見据えている。 瞬間、ボコッという間の抜けた鈍い音が辺りにこだました。 「…………へ?」 彼女の眼前で綺麗に真横へ倒れていく、ケイチの巨体。 あまりの呆気なさに、固く握り締めていたはずの杖も、茂みの上に続けて落下した。 「さすがに効くな、これは」 彼は頭を右手で押さえながら、妙にしっかりとした足取りで立ち上がる。 そして、すっと顔を上げると、得意げな表情でこんな言葉を口にした。 「何はともあれ……私の勝ちだな」 「……は?」 つい心配そうに様子を窺ってしまったナギサは、言葉の意味を理解出来ず、呆然となってしまう。 杖で殴り倒した彼女と、殴り倒されたケイチ。きっと誰が見ても、彼が勝者だとは思わないだろう。 「…………冗談は悪人面だけにしておいたら?」 「ほう?」 「……何よ?」 悪意しか感じられない皮肉に、彼は初めて興味深そうな声を上げる。 「この顔を冗談という事は、本当は違うという意味になるのでは?」 「な……ち、違――――」 思いがけない反撃に、みるみる顔を赤くし、ぺたりとその場に座り込むナギサ。 そこにあるのは歳相応の可愛らしさだけで、普段の艶っぽさはすっかり影を潜めている。 ケイチはしばらく笑った後、突然彼女の手を取って、引っ張り起こした。 「な、なな……!?」 「朝飯、食いに行くぞ」 「何で一緒に行く必要が……!」 必死に抗おうとするナギサだったが、どれだけ力を入れても足で蹴ってみても、彼の大きな体躯は微動たりしない。 「弟子が師匠についてくるのは、自然な事だ」 「その顔で不自然極まりない事言うなー! 大体、誰がいつ弟子になっ――だから、手を離しなさいよっ!」 ずるずると引き摺られていく彼女。しかし、相変わらず彼の表情は、無愛想そのものだ。 「私が勝ったのだから、こちらの要求を聞くのは当然だ」 「負けてない! 後、そんな約束もしてないわよ!!」 ナギサの叫び声と、ケイチの落ち着いていながらも大きな地声が、バハラタの町に響き渡る。 その直後、騒ぎを聞きつけた町の人に人攫いと勘違いされたのだが――――理由を説明しながらも逃げるケイチに引っ張られ、ナギサは何故か共に旅する羽目になるのだった。 後編へ
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