プロローグ『凪沢さんちの日常』



 窓の隙間から入り込む優しい風。揺れるカーテンが移ろわせる太陽の光。耳に心地よい小鳥のさえずり。まるで快適な目覚めが約束されているかのような――そんな、どこか物語めいた朝。
「…………はぁ」
 にも拘わらず、銀髪とトパーズの瞳を持つ少年――トラッドは、ゆっくり上半身を起こした後、酷く重いため息を吐いた。
 しかし、ベッドから足を降ろした後の動作は、気怠げとは無縁なぐらい俊敏で、一切の淀みがなかった。
(天気は……よし)
 外を窺い、鳴る直前の目覚ましを止め、机の上の携帯電話を取ったトラッドは、素早く部屋を出る。そして、手慣れた動きで洗濯機を回した後、足早にキッチンへ向かった。
(今日は、っと)
 それからエプロンをつけ、そっ、と開いた冷蔵庫の中を吟味し、素早くメニューを決める。掛かった時間は約六秒。
 フライパンを温め始めてから、片手で器用に卵を割り、終わればすぐにサラダの準備。同時にお弁当の下拵えも忘れない。一見ぬかりがないようだが、
「あ」
 ご飯を炊いていなかった事に気づく――いや、違う。
 頼んであったご飯が炊かれていない事に気づいたのである。
「……ふぅ」
 そこで再びため息を落とすが、敢えて犯人の名前は呟かない。本当は部屋まで行って窘めたかったが、彼ごときが敵う相手ではなかった。付け加えれば、迂闊に名前も言えない。それだけで悟られる恐れすらあるのだ。
 ご飯を炊き忘れた犯人は、信じられないぐらい鋭いのである。
 渋々お弁当の内容をサンドイッチに変更した彼は、気を取り直して朝食の準備に取り掛かった。
 ポテトサラダ、半熟の目玉焼き、ウィンナー、トースト、と次々に料理ができ上がってゆく。手際の良さは異常を通り越した異様と評しても差し支えないレベルで、骨の髄まで染み込んでいる節があった。毎日やっているから当然ではあるのだが、実はそんなに嫌いな時間でもない。最初こそ嫌々だったのは事実なのだが、いつ頃からか彼は楽しむ域にまで達していたのだった。
 慣れ、とは誠に恐ろしいものである。
 などと思い出に浸る事もなく、トラッドが笑顔で料理をしていると、
「うぅん……お兄ちゃんおはよー」
 背中から眠たげな声が聞こえてきた。
 キッチンの入り口に立っていたのは、向日葵模様のパジャマを着た黒髪の少女――彼の妹、凪沢(なぎさわ)ヤヨイだった。
「おはよう、ヤヨイ」
 トラッドが笑顔で挨拶を返すと、ぱん、と軽く頬を叩いたヤヨイは、
「何か手伝うことある?」
 とてとて、とヒヨコのように傍まで歩み寄り、彼の顔を黒い目で覗き込む。実に愛らしい姿だった。
「じゃあ……朝食を運んでもらおうかな」
「うんっ」
 トラッドは料理を皿に移し、道を空けた――ところで、ふと思い出す。そして、言葉では形容し難い曖昧な表情を浮かべると、おそるおそるヤヨイにこう訊ねた。
「……今日はどっちだっけ?」
「ふぇ? お兄ちゃんだよ?」
「うん……そう、だよな」
 返ってきたのは、彼にとって予想通りの答え。
 分かっていた。そんな事は昨日の夜から、いや、昨日の朝から分かり切っていた。
「……行ってくる」
 お弁当の用意を中断したトラッドは、ぽつり、と一言呟いた後、エプロン姿のまま足を引きずるように歩き出す。
「いってらっしゃーい」
 対してヤヨイは明るい声を掛けるが、俯いた彼の表情からは終末感が消える事はなかった。



 足音を殺して階段を上がり、気配を消して廊下を歩く。
(……ふぅ)
 それから胸中でこっそりため息を吐いてから、顔を上げて扉を見据えた。
 何の変哲もない木製のドア。
 釣り下げられたプレートには、こう書かれてある。

ナギサの部屋

 先ほどトラッドがヤヨイに訊ねたのは、今日はどちらが彼女≠起こす当番だったか、という事だった。
 とはいえ、別に嫌っているわけではない。
 いきなり連れて来られた自分を快く受け入れてくれた恩義は忘れていないし、本当の弟として接してくれる事に感謝しているし、また彼女自身についても好ましく思ってすらいる。
 ただ、彼女の底なしにエネルギッシュな生き様に振り回されるのが、少し苦手なだけで――中でも、これから自分がしなくてはならない使命≠ヘ、もっとも苦手な事の一つだった。
(…………よし、いくか)
 じっ、とトパーズの瞳でドアを見据えたトラッドは、一度だけ深呼吸をする。それから意を決した表情で、ドアを大きめに三度ノック。だが、返事はない。
「ナギサー、入るぞー?」
 これで起きてくれるのが一番なのだが、悲しくもいつも通り。元から期待していなかった彼は、特に落胆した様子もなく、そっ、とドアを開けた。

 きぃ――

 消しようのない音が鳴った。
 しん、と静まり返っているせいか、微かなはずの音はやけに大きく響いた。この瞬間は本当に心臓に悪い。
 しかし、引き返すという選択肢も用意されていない。それはけして選んではいけない、言うなれば選択死≠ナある。既に諦めるという言葉を忘れた彼は、渋々足を踏み入れた。
 室内は酷い有様だった。
 散乱する紙屑。不規則に散らかったビールの空き缶。用途不明のウサギ耳カチューシャ。つけっぱなしのテレビにノートパソコン。何よりもベッドの上でだらしなく眠りこけている姉――凪沢ナギサの寝姿。
 彼でなければため息を落としていたぐらい酷い、まさしく惨状と呼ぶに相応しい現場だった。
(ったく……部屋で飲むなって言ってるのに)
 胸中密かに不満を零しつつ、それでも表には微塵も出さず、物音を立てないよう忍び足で歩くトラッド。
 だが、彼が傍まで辿り着いても、ナギサは相変わらず目を覚まさない。安らかな寝息に金色の髪、無駄な艶っぽさを部屋と同じように巻き散らすだけだった。
「……ナギサー?」
 そこで彼は、小さく呼びかける。
 返事はあった。
「ぐぅぐぅ」
 できそこないの返事が。
 少し泣きたくなった。叩き起こしたくなった。本当は気づいてるんじゃないか、と疑いもした。
 しかし、数秒だけ間を置くと、また寝息が聞こえてくる。
 やっぱり眠っているようだった。
 紛らわしいがこれも珍しくはない、などとトラッドは底知れぬ悲しみに包まれつつも、肩を揺り動かそうと手を伸ばした――その時。

 ナギサの目が。
 宝石を思わせる美しい碧眼が――――開いた。

 逃げなければ。
 何か、何か盾になるものは。
 トラッドの頭は、コンマ数秒で判断を下していた。
 だが、その神懸かり的な思考速度に身体がついていかない。それを遅い≠ニ嘲笑うかのごとく、彼女の姿は消えていた。
 見失った――のではない。
 目が開いた事に気を取られた隙を突いて、ナギサはとっくに背後に回っていたのだ。
 完全に諦めたトラッドは膝をつき、思った。

 結局これか、と。

 そう、いつも通り。
 ナギサを起こしに行って、ぱしぃん、とハリセンで頭を叩かれるのは――


 ――たった一度の例外もないぐらい、いつも通りの事なのであった。


「や、いつも悪いと思ってるのよ?」
「……」
 そんなこんなで三人は朝食の席に着く。するとナギサが珍しく反省した様子で、そう話しかけてきた。トラッドも鬼ではない。一応は真剣に耳を傾けはしたのだが、
「でも、ほら。どうしようもない事情ってあるじゃない?」
「……起こしに行った弟の頭をハリセンで叩くのに、どんな事情があるんだよ」
「んー、気分?」
「…………もういい」
 返ってきた言葉は相も変わらず酷いもので、早々に諦めざるを得なかった。
「ほら、怒らない怒らない」
「別に怒ってないけど、俺が怒りそうな可能性を作ったのは誰だよ?」
「イタズラ好きの妖精さんじゃないかしら?」
「根拠は?」
「状況証拠」
「何一つ揃ってない!」
 とはいえ、騒々しいやり取りにはまるでトゲがない。それを理解しているからこそ、見守るヤヨイの視線も温かかった。
 そう、これもやはりいつも通り。
 かけがえのない日常の一ページなのである。
「まぁまぁ、そろそろ愛しい彼女≠ェ来る時間じゃない? そんな顔してたら怖がられちゃうわよ?」
「べ、べつに彼女ってわけじゃ――」
 そうして会話の風向きが変わり始めた直後、ぴんぽーん、というチャイム音が家中にこだました。
「はい、迎えに行った行った」
「……ったく」
 仕方なく、もしくはどこか安堵したように、トラッドは玄関に向かった。本人に自覚はないが、足取りはナギサを起こしに行く時よりも遙かに軽やかだった。
 程なくして、ドアを開けると、
「トラッド、おはよう」
 そこには夏仕様の制服に身を包む少女が立っていた。
 ヤヨイとは違う深みを帯びた黒い瞳と、三つ編みにされた髪。汚れを知らない雪のように真っ白な肌に、ちょこん、と小さな鼻と桜色の唇を乗せた小柄な女の子。
「おはよう――――リノ」
 彼女の名前は、七倉(ななくら)リノ。隣に住む幼馴染みである。
 しばし見つめ合い、どちらからともなく視線を外し、ほんの数秒の妙にもどかしい沈黙を経て。
「えっと……も、もう朝食できてるから」
 彼が少し緊張した面持ちで、幼馴染みの少女を招き入れた。
 控えめに、こくり、と頷いたリノは、早速靴を脱いで家に上がったのだが、
「……今日はトラッドなんだ?」
 彼の後頭部を見ると同時に、ぽつり、とそう口にした。
 リノが言っているのはナギサ当番≠フ事なのだが、こうもはっきり当てられたのは初めてだった。
「…………よく分かったな」
 トラッドは、表情に出ていただろうか、と少し申し訳ない気持ちになる。
「うん……たんこぶで」
 だが、彼女の答えはロマンのカケラもなかった。そして彼が後頭部をなぞると、痛みを発する膨らみが確かに残っていた。いつもならとっくに治まっているはずなのに、だ。そこでよくよく思い返してみると、今日の一撃は比較的強烈だった事に気づく。どうやら叩かれ過ぎるあまり、感覚が麻痺していたらしい。
 慣れ、とは全く恐ろしいものである。
「大丈夫?」
「……じきに治まると思う」
 実のところ、まだまだ消えそうにないのだが、余計な心配をさせる必要もない、という理由でトラッドはそう答えた。
「リノちゃん、おっはよー」
「おはようございます、リノさん」
「うん、おはよう」
 そんなこんなで四人が席に着き、ようやく朝食が始まった。
「リノちゃん、そのリボン新しいの?」
「う、うんっ……ヘン、かな?」
「そんなことないですよ」
「前の白もよかったけど、リノちゃんって黄色も似合うのね。うん、すっごくステキ」
「それは言い過ぎだと思うけど」
「……で、トラッドは何て?」
「え?」
「トラッド……まさか――」
「い、いや、気づいてた、けど」
「けど、なに?」
「言いそびれた、っていうか……」
「それは理由になってないわよ――このッ」
「痛っ!? って、どこから出した!?」
「侍たるもの、刀は肌身離さず持ち歩いてるものよ」
「ナギサは雑誌記者だろ……あと、刀じゃなくてハリセンじゃねぇか!」
 弾みっぱなしの会話と景気の良いハリセン音が織り成す、賑やかで騒々しい朝食の風景。
「ナ、ナギサ。私は、別に――」
「だーめ。リノちゃんは私の未来の妹なんだから、こういうことはきっちりしておかなきゃ、ねっ?」
「何でそうなる!?」
「小さい頃、リノちゃんが言ってたじゃない――トラッドをお嫁さんにする≠チて」
「衝撃的なプロポーズでしたよね」
「そ、それは俺が作ったクッキーを毎日食べたいからって理由だろ! 大体、話が逆――」
「あら、何か不満でも?」
「……っ! い、いや……えっと」
「三人とも……その話はもう忘れて欲しいんだけど」
 大抵はナギサが二人をからかい、ぽそっ、とヤヨイが内容に深みを持たせる事が多い。けして楽しくないわけではないのだが、標的にされる当の本人たちにとってはたまったものではない。特に最近は頻繁なため、さすがの二人もうっかり意識してしまう。
 とはいえ、全く脈がないかと言えば――そうでもない。
 むしろ、逆。
 本人たちは気づかれていないつもりでも、傍からはそうとしか見えないぐらい分かりやすいのである。
 つまり、ナギサとヤヨイにとっては明らかに脈あり≠ニいう脈絡があるため、もどかしい二人をついついからかってしまうのだ。決定的な事を口にしないのが、せめてもの救いである。
 それから朝食を終えると、トラッドはリノにお弁当を渡す。
「今日は気分を変えてサンドイッチにしてみたけど、構わないか?」
「うん、いつもありがとう」
 ヤヨイが選んだ向日葵模様の包みを、嬉しそうに受け取るリノ。休日以外は毎朝の事なのだが、その極上の笑顔にトラッドはいつも見惚れている。
 同時に、毎回思う。
「ひゅーひゅー、朝から暖房いらずねっ」
 ナギサの冷やかしがなければ、もうしばらくは現実を忘れていられるのに、と。
 ちなみにヤヨイも極めて温かい笑顔を浮かべているのだが、それはいつもの事なので気にならなかった。おそらくは日頃の行いも関係しているに違いない。
 ともあれ二人は、今日も上気した顔で学校へと向かうのであった。



「……ったく、ナギサは」
 家を出て、何度か振り返り、ほっ、と一息を吐いてから、トラッドは苦々しく呟く。明らかに警戒し過ぎだが、休日で暇を持て余していた彼女に尾行され、思いっきりハリセンで叩かれた事があるので、無理もない。
 余談だが、その時の言い訳は人はこうして大人になるのよ≠ナ、彼はそれ以来、半分本気で別の方法を模索していたりする。ある意味、間違っていないのかもしれない。
「えっと……ごめん」
 それから数分ほど歩いたところで、ぽつり、とリノがか細い声で謝罪する。
「あ、いや、リノは何も悪くないからな?」
「でも、いつも朝食におじゃましてるし……」
 これには理由があった。
 リノは小さい頃に父親を亡くしており、母親は朝早くから夜遅くまで仕事をしなければならなかった。ゆえに彼女は、いつも一人で留守番をしていたのだが、それを知ったナギサはよく家に連れて来るようになった。そうして詳しい事情を知った後、
「じゃあ、リノちゃんが一人の時はうちでご飯を食べればいいのよ。ねっ?」
 と提案したのである。
 彼女の母親の負担を軽減する、という真面目な理由ももちろんあった。だが、リノが可愛くて仕方ないナギサは、少しでも同じ時間を共有したい、と強く望んだのである。
 最初は断っていたリノの母親は、その本心を聞いて楽しげに笑った後、娘をお願いします、とお辞儀をしたのであった。
 とはいえ、結局作るのはトラッドなのだが、
「気にしなくていいって。ナギサとヤヨイも喜んでるし……元々はナギサのワガママなんだから」
 彼もナギサと寸分違わず同意見だった。
「あと、俺もナギサの朝食を置いておく手間が省けるし、むしろ助かってるぐらいだ」
「そう、なの?」
「……結構面倒だしな、アレ」
 皿に分け、ラップをし、書き置きをするなら、一度で済ませる方が彼には楽なのである。
「――……それに」
 結果、ナギサを起こしに行く仕事が増えたが、それは些末事だった。
 そう、ナギサとヤヨイに限った話ではない。
「それに?」
「俺も……その、リノと一緒の方が、いい、し」
 他でもない彼自身も、そう望んでいるのだから。
「トラッド……」
 微かな熱を帯びたリノの声が、不意に自分の名前を呼ぶ。
 そこで、初めて気づく。
 自分が今、とんでもなく大胆な発言をした事に。
「と、とにかく!」
「わっ」
 その恥ずかしさを誤魔化すように、トラッドは彼女の頭を撫で、
「……リノは何も気にしなくていいんだからな」
 ぽつり、と一言。
 優しい掌の――好きな人の感触。
 心が温かくなる、ふわり、と柔らかい声色。
「…………うん」
 そんな彼に頭を撫でられるのが、リノは大好きで――ゆえに彼女は自然とトラッドに身を寄せてしまい、毎回どちらからともなく慌てて離れるのである。

 ちなみに。

(もう……リノさんってば)
 遅れて出てきたヤヨイが、偶然にもその様子を初めて目撃した事も。
 明日の会話の内容が密かに決定された事も。
 今の二人は知る由もなかった。



 トラッドとリノの通う高校が近づくにつれ、学生の姿が増える。そして、二人が何度かクラスメイトに挨拶し終えた頃。
「……ふぅ」
 しきりに後頭部をさすっていたトラッドが、深い安堵の息を零した。どうやら、やっと痛みが治まったらしい。
「もう大丈夫?」
 彼に気を遣わせないよう、敢えて黙っていたリノは、そこで初めて心配の声を掛ける。
「ん? 何とか」
「今日のたんこぶ……大きかったよね」
「分かるものなのか、それ」
「……まぁ、二日に一回は見てるし」
 慣れ、とは極めて恐ろしいものである。
 とはいえ、その時はまだ何とも思っていなかったのだが、
「もしかしてナギサ……機嫌が悪かったのかな」
 校門をくぐった辺りで、リノがふと呟いた。
「そうか? いつもと変わらなかったと思うけど」
「それはそうなんだけど、ナギサって表に出さなそうだから」
 事実だとすると、非常に厄介である。おまけに分かりやすいようで分かりにくい上に、痛みでしか把握できないのは、実に不毛である。
 しかし、ここまで痛みが長引いた事もない。つまり、もしリノの言う通りなら、ナギサは相当に機嫌が悪い事になる。
「うーん……何かあったっけな」
 トラッドは思い当たる節を探す。職場の事は分からないため、日常生活の中から記憶の糸を手繰り寄せる。
 何かがあるはず。
 何かあったはず。
 あの笑顔と余裕を絶やさないナギサが、機嫌を損ねるだけの何か≠ェ。
 考える、考える――考える。
「……あ」
 そして、ちょうど下足箱にスニーカーを入れたところで、ようやく思い至る。

「もしかして――魔王=H」

「魔王≠チて……あの?」
 リノもすぐに反応を示す。
 いや、すぐに反応を示さないわけがなかった。
 何故なら、そのゲームやマンガなどでしか聞かない単語がニュースで流れたのは二日前の事で、今もまだ世間の興味を独占し続けているのだから。

 かくして、物語の幕は開く。
 否、違う。


 彼女――凪沢ナギサ≠フ戦いの火蓋は、実は既に切って落とされていたのであった。



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